【平均律クラヴィーア曲集第１巻　第17番　BWV862／J.S.バッハ】

この曲のプレリュードとフーガは、性格的にコントラストをつけるものではなく、演奏者は奏法でコントラストをつけなくてはいけない。
プレリュードは踊り。クラブサンなどで弾いているようなことを模倣する。
- そのためには休符を正しくするということ。出だしの全ての16分音符に価値をもたせること。
- プレリュードはタッチを変えず、スタイルをキープする。
- 16分音符は輝かしく太陽のように。
- ８分音符ははねているように、ただし鍵盤の近くで。
- プレリュードでは、愛らしさ、やさしさ、かわいらしさ、ここちよさを表現。
フーガは壮麗さ、神をイメージ。
- 弦楽器を弾くように。深いレガートをピアノで表現する。
- そのためには、歩くように鍵盤に指を長めに置く。
- ビブラートを使って倍音を出すように。
- そのためには鍵盤の深い部分を弾く。→ハンマーが降りず、打楽器ではなく弦楽器としての響きがでる。
- テーマの提示に続いて新しいテーマが出てきた時、指でアーティキュレーションをつける。
- 長い音のあとの短い音符が大きくならないように。
- 毎回テーマをレガーティッシモで弾き、どの声部でテーマが出てきても、それをしっかりと聴く。

【フランス組曲第５番　アルマンド／J.S.バッハ】

ポリフォニーでは、多声をただ弾くだけでなく、各声部間の会話を聞くこと。
笑うとき、口角があがるが、指もしっかりあげないと伝わらない。指を上げて弾くことで何を表現しようとしているのかがわかる。
弦楽器の演奏をイメージして。上声部はヴァイオリン、下声部はチェロ・・といったように。
長いフレーズを長い弓で弾くように。
鍵盤を押すのには２段階ある。中間部と一番下まで。その一番下から半分くらいのところを弾くことで、レガートができる。（中間部だけで弾いてもレガートにはならない）
指の腹で弾くと柔らかい音になる。指の先で弾くとするどい音になる。しっかりと使い分ける。

【ソナタ　Op.22　第一楽章／L.v.ベートーヴェン】

交響的な響きを持って。ここには管楽器や弦楽器の響きがある。特別な音色を出さなければならない。
オーケストラが100人くらいで演奏するイメージ。響きの幅を広げて。
モーツァルトやハイドンよりも壮大な音楽で。
各声部の動きを理解する。
スフォルツァンドは奏法を明確に。

【ソナタ　Hob.ⅩⅥ:27 第一楽章／F.J.ハイドン】

音楽の性格をまず理解する。華やかに、アクティブに。それが聴いている人に伝わるように。
アクセントをつけることで音楽を発展させる。
装飾音が大きくなりすぎないように。
同じ音が続くとき、すべて違う音を出さなければならない。クレッシェンドするように。
古典派の作品は、同じ音が続く時、全て指を変える。それによって響きが変わりクレッシェンドしやすくなる。
オーケストラを意識して、華やかな音量で。
フレーズはいつもフィナーレに向かうように。スラーは手首の動きである。（手首のイントネーション）それを一つの動きで弾く。

サヴェリエワ・エレーナ先生は、モスクワ音楽院大学院の主任教授をされており、室内楽などのCDも出されている先生です。
今回初めて本校にお越しいただき、レッスンをしていただきました。
エレーナ先生は、生徒の様子を見ながら、ピアノの音の出し方や表現などを、とてもわかりやすく教えてくださいました。
また先生が演奏されるピアノはとても深みのある響きで、表現によって繊細な音色の違いを感じさせます。
伺うと、先生はピアノにおいて弦楽器の音色を追求されているということです。
ぜひ生徒達も、先生のピアノを間近で聴かせていただき、その音色やタッチを吸収してほしいと思います。